病院薬剤師masashitti’s blog ~薬剤師の未来~

中小病院で働く薬剤師です。勉強したことや共有したいこと、たまに日々の疑問や薬剤師についてつぶやいてみます。

抑肝散BPSDへの効果

入院中の不穏、せん妄、認知症BPSD(主に興奮や焦燥)に最近多く目にする処方。

BZ系や抗精神病薬はリスクもあり、抑肝散を第一にする場合も多く感じる。

効果は…まあある症例もあるってくらいの感触。

 

実際に添付文書上での適応はというと

虚弱な体質で神経が高ぶるものの次の諸症:神経症不眠症
小児夜泣き、小児疳症

生薬として鎮静、抗不安作用のあるもので構成されている。

 薬理作用としてはグルタミンやセロトニンに作用することがわかっている。

 

そこで看護師セミナーで不眠、BPSDの勉強会をする際に見つけた論文を見てみることとした。

 

○参考論文:Randomized double-blind placebo-controlled multicenter trial of Yokukansan for neuropsychiatric symptoms in Alzheimer's disease.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26711658

 

○論文のPICO

P:アルツハイマー認知症

I:抑肝散+通常治療

C:プラセボ+通常治療

O:4週後のBPSDの効果(NPI-Q)と安全性

 

○ランダム化

されている。

 

○群間差の同等性

同等と思われる。

 

○ITT解析

されていないが追跡率は94%

 

○盲検化

二重盲検。

 

○症例数(サンプルサイズ)

わからん。妥当と思う。

 

○結果

NPI-Qの4週間後と12週間後の変化は、抑肝散群とプラセボ群との間で有意差はなかった。また、NPI-Q、NPI-Q下位評価尺度、MMSEの12週間の変化におけるグループ間の有意差はなかった。

しかしMMSEが20点未満のサブグループでは「興奮/攻撃性」などの低下が大きかった。

カリウム血症は有意差はなかったがその傾向はみられた。

 

○個人的なまとめ

微妙だな。

ただ現場では明らかに過鎮静になる人や効果のある人も結構いる気もする。

確かに重症例ではほとんど意味を成していない。軽度の興奮には効果がありそう。

あたりまえだけど、この論文では低カリウム血症に有意差なかったけど現場ではループ利尿薬とか飲んでる人が多くて、低カリウム血症は要注意。

 

副作用も抗精神病薬よりは少ないし

まずは試して、4週間前後で効果判定でもいいけど急性期だと早期退院がBPSD改善に最も効果があることも無視できないかな。

「施設に戻るとぜんぜんBPSDでなかったですよ?」的なこともよく聞く。