医療現場の行動経済学 すれ違う医者と患者(おすすめ本)
「なぜ患者さんは治療方針を決められないのか」
「なぜお医者さんは不安な気持ちをわかってくれないのか」
このような場面は多くあるかと思います
これらの問題の解決の一助になる本です
行動経済学をご存知でしょうか
2002年ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン
2017年ノーベル経済学賞を受賞したリチャード・H・セイラー
言葉を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか
行動経済学とは
経済学とは異なるもので
行動経済学とは、実際の人間は経済的合理性には合わない行動をするということを、心理学などを用いて研究していく学問です
例えば行動経済学の基本的なものの一つでプロスペクト理論というものがあります
プロスペクト理論とは
このような質問があります(直感で答えてみてください)
1 あなたは確実に100万円もらえる
2 あなたはコインを投げ、表が出たら200万円もらうことができますが、裏が出ればなにももらえない
多くの方が1の選択肢を選ぶそうです
人は利益を目の前にしたときは確実な選択肢を取る傾向が強いと言えます
では次の質問です(直感で答えてみてください)
あなたは200万円の負債があります
1 あなたは確実に100万円もらえる
2 あなたはコインを投げ、表が出たら200万円もらうことができますが、裏が出ればなにももらえない
多くの方が2の選択肢を選ぶそうです
それぞれの質問の1と2の期待値は同じですが
人間は目の前に利益があると、「利益が手に入らないというリスク」の回避を優先し、損失を目の前にすると、「損失そのもの」を回避しようとする傾向があるそうです
このような行動経済学は
「人間は、いかなる場合も合理的に行動する生き物だと思われていたが、実はそうではなく、様々な心理状態によって非合理的な行動を取ることがある」
医療の現場でよくあることだと思いませんか?
医療者からみて明らかに合理的な治療法を勧めても、受け入れない患者や別の選択肢を選ぶ患者はいくらでもいます。
「Shared decision making(シェアード・ディシジョン・メイキング)」
という言葉を聞いたことがありますか
これは医療者と患者さんがエビデンスを共有していっしょに治療方針を決定するというもので近年の医療の場では、それが必要とされる場面が多くなりつつあります
わたしは薬剤師は薬物治療で患者の意思決定に関わることのできる職種の一つだと考えています
本の中でナッジ理論というものが
紹介されており、人の行動変容に用いられる手法のひとつで
患者の行動変容をより良いものにするための行動経済学のバイアスを含めた内容で書かれており、例もあり非常にわかりやすいです
「行動経済学では、人間の意思決定には、合理的な意思決定から系統的に逸脱する傾向、すなわちバイアスが存在すると想定している。そのため、同じ情報であっても、その表現の仕方次第で私たちの意思決定が違ってくることが知られている。医療者がそうした患者の意思決定のバイアスを知っていたならば、患者により合理的な意思決定をうまくさせることができるようになる。また、医療者自身にも様々な意思決定におけるバイアスがある。そうしたバイアスから逃れて、できるだけ合理的な意思決定ができるようにしたい。患者も行動経済学を知ることで、自分自身でよりよい意思決定ができるようになるだろう。」--「はじめに」より
本屋で一度手に取ってみてください
ぜひポチッと買って読んでみてください
参考になると思います
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