病院薬剤師masashitti’s blog ~薬剤師の未来~

中小病院で働く薬剤師です。勉強したことや共有したいこと、たまに日々の疑問や薬剤師についてつぶやいてみます。

スルピリドについて

学生の頃は適応症の違いによって用法用量が変わる薬剤の代表格として習った。

添付文書上では

○胃・十二指腸潰瘍

通常成人1日150mgを3回に分割経口投与する。

統合失調症

通常成人1日300mg~600mgを分割経口投与する。

うつ病うつ状態

通常成人1日150mg~300mgを分割経口投与する。

 

学生の頃は

「なんかいろんなやつに効くんやなー。」

とか呆然と考えてたけど。

実際働いてる中でパーキンソニズムの被疑薬として見ることが多い!

 

正直なところ個人的な実感として食欲不振に対して処方されてるときも効果を実感したことはない!!

 

てかことで一度さらっと調べてみました。

 

薬理作用など

  1. 脳内での強力な抗ドパミン作用
  2. 視床下部交感神経中枢に作用し交感神経の興奮により起こる血管攣縮を抑制し、胃粘膜血流の停滞を改善する。また潰瘍の防御因子として重要な胃粘膜成分を増加せしめる。
  3. その他

CTZを介しての中枢性嘔吐に対する制吐作用

クロルプロマジンの14.3 倍)

引用元:ドグマチール®インタビューフォーム 

 

この制吐作用についてはあまり知られてないのでは?

疾患による嘔吐を不顕性化する可能性がある。

 

副作用

  1. 内分泌機能異常(プロラクチン値上昇)
  2. 錐体外路症状     etc...

 

この錐体外路症状が高齢者ではほんとに多い。

代表格が遅発性ジスキネジア

高齢者の方のお口もぐもぐはこれです。

こういう高齢の知り合いがいれば薬を確認してみてください。

 

薬剤師としては以下の評価スケールを利用し、

日々の患者ケアに役立ててほしいところですね。

 

DIEPSS

抗精神病薬で発症する錐体外路症状を評価するために標準化されたスケール

歩行,動作緩慢,流涎,筋強剛,振戦,アカシジアジストニア,ジスキネシア,概括重症度の9項目,および各症状の重症度を4段階に分類しています。

 

副作用実例

圧迫骨折にて入院。高齢者女性。

入院時リハビリ中に歩行障害(すくみ足)がみられ、下肢振戦著名。

その他の症状として無表情、アパシー

神経内科へ紹介され、パーキンソン病疑いでL-dopa開始。

軽度改善見られた。

担当外薬剤師がスルピリド内服していること発見。神経内科医へ報告し、スルピリド中止。L-dopaも一旦中止し、経過観察。

さらに症状改善見られ、退院。

その後の施設にて自発性改善が徐々にみられている。

 

可逆的に戻ってよかった症例。

スルピリドの処方意図は不明。(たぶん食欲不振?)

何十年と内服していた様子。

 

 

じゃあ実際の治療の効果はどうなんだ?

正直微妙ではないでしょうか。

統合失調症に対するCochran Reviewでは

プラセボに対する優位性の証拠は非常に限られているとされ、かなり情報は少ない。

https://doi.org/10.1002/14651858.CD007811.pub2

https://doi.org/10.1002/14651858.CD001162

 

うつ病に対しては「日本うつ病学会治療ガイドライン」ではスルピリドでの治療は副作用の問題から推奨はされていない。

 

胃・十二指腸潰瘍についてはいわなくてもいいですよね?

PPI、H2RAには到底及びません。

 

食欲増進効果は?

理論的には消化管のドパミンD2受容体を遮断し、アセチルコリンの分泌を促進。

そのアセチルコリンによる消化管運動亢進。

以下のメタ解析では有効性は実証できていない。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22795216

 

つまり医師の経験的に処方されている薬剤といえる。

 

結論

おれが医者なら絶対に使わん薬だろうな。

高齢者で飲んでる人いたら1回やめてみるように提案する。

「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015;慎重な投与を要する薬物」

スルピリドエビデンスの質は「低」ですが、推奨度は「強」です。