雑感9/23
先日ちょっとうれしい出来事がありました。
薬剤部に外線がはいった。
「masashittiくん、なんかBさんって患者さんから名指しで電話きてるみたい。」
懐かしい名前でした。2年前くらいかな?
カテーテル治療や検査で入院を2,3回担当した方でした。
まあわがままというか、こだわりの強い方でして
自分でかかりつけのクリニックの薬を紙で一包化していました。
80代のわりにしっかり薬も管理していた方でした。
しかし当院の薬も追加になり、外来では当院は2ヵ月単位で院外処方、かかかりつけは2週間単位で院内処方で残薬も少し気になり始めたので
一包化を薬局でしてもらったらどうかと提案しましたが
「自分の薬をなんで他人にしてもらわなあかんの!」
「これも仕事のうちや!」
と言い張り、当時病棟へいきたての私は
「なんじゃこの人は、残薬もけっこう出てきてるのに。」
と不満爆発してましたが、カテーテル後などは圧迫止血などで自分で一包化する時間がないときは手伝ってあげてました。
だからかほんとによく覚えてます。
(他にもご家族も担当したこともあって、そのときもいろいろありました)
それから入院もなく、過ごしておられたのに
急に自分に電話よこすってどうしたんやろ?
と少し心配な気持ちで電話に出ました。
私「もしもし、お久しぶりです。masashittiです。元気でしたか?急にどうしたんですか?」
B「masashittiさんか!久しぶりやな!あんたまだあの病棟におるんか!?
うちの親友が入院したみたいでな!電話して見舞いいくわって言うたんやけど来んでいいって言われて、どんなもんかと思ってな。」
いきなりすごい勢いで話し始めました(/o\)
友人が週末に救急で当院に運ばれ、入院になったみたいで
集中治療室にいるから来なくていいと言われたと。
そっち行きたいんやけどどうしたらいいか?
(ちなみに要約しましたが10分ほどこの話をしました)
とりあえず友人だとは思うけど個人情報は言えないということを伝え、
共通のヘルパーが様子を伺いにいくとのことなのでそのときに状況を聞いてもらうことになった。
その電話のあと、友人と思われる方の病室へ伺いにいきました。
この人もよくBさんの入院のときに付いてきてくれて方でした。
まあ状態も落ち着いてて、一般病室へ移ってたので
少し世間話をしつつ、またBさんに連絡してあげてくださいと一言伝えてきました。
なかなか病院薬剤師あてに直接連絡来ることってないんですよ。(私だけ!?)
薬剤師の名前を覚えてくれる高齢の方ってほんとうにいないんですしねー。
でもこうやって頼ってくれる人もおるし
外来でちらっと
以前入院していた方を見かけたときに声をかけられ、お話しすることや
時には薬についてなど相談事をされることもあります。
こういうとき薬剤師として関われてるなーと実感することができます。
あまり直接感謝されにくい職種だと思いますがね。
抑肝散BPSDへの効果
入院中の不穏、せん妄、認知症BPSD(主に興奮や焦燥)に最近多く目にする処方。
BZ系や抗精神病薬はリスクもあり、抑肝散を第一にする場合も多く感じる。
効果は…まあある症例もあるってくらいの感触。
実際に添付文書上での適応はというと
虚弱な体質で神経が高ぶるものの次の諸症:神経症、不眠症、
小児夜泣き、小児疳症
生薬として鎮静、抗不安作用のあるもので構成されている。
薬理作用としてはグルタミンやセロトニンに作用することがわかっている。
そこで看護師セミナーで不眠、BPSDの勉強会をする際に見つけた論文を見てみることとした。
○参考論文:Randomized double-blind placebo-controlled multicenter trial of Yokukansan for neuropsychiatric symptoms in Alzheimer's disease.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26711658
○論文のPICO
I:抑肝散+通常治療
C:プラセボ+通常治療
O:4週後のBPSDの効果(NPI-Q)と安全性
○ランダム化
されている。
○群間差の同等性
同等と思われる。
○ITT解析
されていないが追跡率は94%
○盲検化
二重盲検。
○症例数(サンプルサイズ)
わからん。妥当と思う。
○結果
NPI-Qの4週間後と12週間後の変化は、抑肝散群とプラセボ群との間で有意差はなかった。また、NPI-Q、NPI-Q下位評価尺度、MMSEの12週間の変化におけるグループ間の有意差はなかった。
しかしMMSEが20点未満のサブグループでは「興奮/攻撃性」などの低下が大きかった。
低カリウム血症は有意差はなかったがその傾向はみられた。
○個人的なまとめ
微妙だな。
ただ現場では明らかに過鎮静になる人や効果のある人も結構いる気もする。
確かに重症例ではほとんど意味を成していない。軽度の興奮には効果がありそう。
あたりまえだけど、この論文では低カリウム血症に有意差なかったけど現場ではループ利尿薬とか飲んでる人が多くて、低カリウム血症は要注意。
副作用も抗精神病薬よりは少ないし
まずは試して、4週間前後で効果判定でもいいけど急性期だと早期退院がBPSD改善に最も効果があることも無視できないかな。
「施設に戻るとぜんぜんBPSDでなかったですよ?」的なこともよく聞く。
たばこの煙に含まれる成分
たばこの煙ほど嫌いなものはないかもしれない。
どーもmasashittiです。
この記事ではたばこ煙に含まれる化学物質についてお話します。
ニコチン
これはだれでも知ってますよね。
ニコチンはたばこの依存形成の原因物質として知られていることでしょう。
依存症の発生はヘロインやコカインよりも多く、使用を中止することの困難さもヘロインやコカインと同程度と言われています。
薬理作用としては自律神経を刺激する作用があり、副腎髄質に作用し、アドレナリンの放出を促進させます。
血管収縮作用は強く、心臓に対しては徐脈や頻脈も起こす場合がありますので不整脈を誘発しやすくなります。
糖代謝では交感神経優位になるため、糖尿病を悪化させたり、消化器系では副交感神経が優位になるため、慢性胃炎や消化性潰瘍などのリスクが高まります。
一酸化炭素
一酸化炭素中毒は聞いたことがあるかもしれないが、一酸化炭素は赤血球と強力に結合して本来結合するはずの酸素が結合しにくくなり、全身への酸素運搬が効率よくできなくなる。それによって身体の運動能力を低下させる。
また心筋では低酸素、負荷増加が起こり、虚血性心疾患や不整脈が起こりやすくなる。
ホルムアルデヒド
有機化合物の不完全燃焼で発生する。発がん性があることがわかっており、粘膜刺激性も有しているため、気管支喘息やシックハウス症候群、化学物質過敏症の原因として知られている。
アンモニア
たばこに含まれるアンモニウム化合物から発生し、副流煙に多く含まれ、粘膜刺激性が強い物質。
ニトロソアミン類
多くが発がん性を持ち、腺組織のがん化を促進することがわかっています。
多環芳香族炭化水素類
有機物の不完全燃焼で発生するピレンやベンゾピレン、アントラセンなどの副巣のベンゼン環が縮合した物質。
体内で代謝され、DNAと共有結合して発がん性の遺伝子変異を引き起こす。
またテオフィリンや一部の抗精神病薬の代謝酵素を誘導するため、これらの薬剤の効果を減弱させてしまう。
またアレルギー物質とのアジュバント効果もあり、アレルギー発生にも関与している。
ダイオキシン類
塩素化合物と有機化合物が低温燃焼したときに発生する2つのベンゼン環が酸素原子を介して結合し、塩素が結合した化合物。
発がん性や環境ホルモンとして影響を及ぼす。
活性酸素
酸化作用の強い酸素関連物質であり、ヒドロキラジカルや多環芳香族炭化水素類の代謝過程で発生するスーパーラジカルがある。
DNAを参加させ、がん化を誘発、血管壁を酸化させることで動脈硬化を引き起こします。
さらに血液凝固亢進、血管攣縮を引き起こすこともわかっている。
また肺胞などの弾性線維を破壊するため、COPDや自然気胸の原因となるとともに皮膚や骨組織などの膠原線維を破壊、合成阻害することでしわや骨粗しょう症のリスクにもなる。
ポロニウム210
α線は物質透過性が低いため、体外からの影響はほとんどないが、喫煙により体内に取り込まれることで体内の被ばくが起こり、DNA損傷、がん化を引き起こす。
このほかにもたばこには他にもいろいろな化学物質が含まれています。
その種類は5000種以上の化学物質が含まれ、70種ほどは発がん性物質として
国際がん研究機関(IARC)によって認められています。
有害な物質は200種類ほど知られている。
これらの物質は比較的副流煙に多く含まれるものも多く、
受動喫煙を防止することが非常に重要であり、また喫煙者は理解を十分に深める必要がある。
健康増進法改正の必要性や内容の充実は必須であることがわかる。
またたばこ製品にはこれらの物質の有害性を実感しにくくする添加物やニコチンの吸収や作用を増強するものを添加させている。
雑感9/12
ある日の出来事
(少し話いじってます)
ある日、風邪と思われる人がいました。咳が特につらく、夜が眠れないと。
ゴホッ、ゴホッ、ン、ンッ、ゴホッ
薬剤師A「風邪で咳がひどい時、どうしてる?」
私「水分とるか、うがいして喉の痛み紛らわすくらいですね。あんまり熱とかでしんどかったり、のど痛かったらOTC選んで買いますね。」
薬剤師A「そっか。リンコデとか便秘するかな?」
私「まあするかもしれないですね。風邪くらいなら少し体休めたらすぐ良くなりますしね。」
数分後...
薬剤師A「ホクナリンテープ持ってない?」
薬剤師B「ありますよ。」
薬剤師A「何枚ある?」
薬剤師B「3枚ですね。」←薬局の在庫ではなく、調剤済の残薬
薬剤師A「じゃあちょうだい。あの子、咳ひどいから貼ってもらうわ。」
数分後...
薬剤師A「私貼った時、すごい効いたから使ってみ。」
非薬剤師「ゴホッ、あ、ありがとうございます。これって...」
このやり取りを一部始終見てました。
注意しようと思いましたがその方のメンツもあるのでその場では言えませんでしたが。
(ちょっと特殊な人間関係があったのです...立場弱め)
てか効かないと思うけどな。上気道感染の咳にツロブテロールは効きませんよ。
(効果は不明といったほうがいいのか?)
気管支喘息などによって収縮した気管支を広げる効果がある薬です。あなた薬剤師でしょうが。
自分の経験だけで人に勧めたら行かんでしょ。
患者同士でもよくあげてること多いですよね。
ジクロフェナク定期飲みの人にロコアテープあげたりさ。
眠剤交換会開催したりさ。
1番びびった症例は前立腺肥大症の尿閉で薬歴聞いてたら友人から鼻水にPL配合顆粒をもらって飲んだと。
ばかばかしいよ。ほんと。
今回もズバッと注意するべきでした。反省...
たばこ受動喫煙について
もう注目は過ぎたかもしれませんが禁煙指導認定薬剤師として少し記事をいくつか書いていきたいと思います。
受動喫煙法(改正健康増進法)
健康増進法の一部を改正する法律 概要
今年国会で可決され、2020年を目処に全面的に施行されます。
多数が利用する建物内での禁煙が義務化され、罰則も適応される内容となっております。
先行して、東京都や千葉県では受動喫煙関連の条例も制定されています。
喫煙者の方々には世知辛いでしょうがこれも時代の流れ。ようやく動き出した。
(改正法の内容はまだまだ甘いとは思いますが…)
日本医療政策機構のインターネット調査の速報が出ていましたが
・58.1%が「喫煙可」の飲食店への入店を避ける
・35.8%が「電気加熱式たばこによる受動喫煙」の健康への影響が気になる
との調査結果が出ていました。
国民の関心も高くなってます。
自分も子どもが生まれてから前よりもすごい気にするようになりました。
禁煙認定指導者というものを持ってますのでまだまだ拙い知識ですが何回かに分けて話していきたいと思います。
たばこの社会的損失
たばこが社会に及ぼす2015年度の総損失額が、約2兆500億円に上るとの推計を、厚生労働省研究班がまとめています。
(ちなみに税収の方がほんの少し高い計算となる。厚労省の忖度?)
しかし医療経済研究機関「喫煙政策のコスト・ベネフィット分析に係わる調査研究報告書」や「たばこ白書」では社会的に少なくとも4兆円以上の損失があるとされており、やはり社会的損失が大きいことがわかります。
たばこの健康被害
いまさら言うことでもないですが見てみましょう。
各種がん、虚血性心疾患、脳卒中、肺気腫(COPD)、末梢血管疾患
骨粗しょう症(骨折)、月経異常、生殖器障害、不妊、etc...
創傷治癒遅延、せき、たん、齲歯(歯の変色)、手足の冷え
味覚異常、嗅覚異常、老化(顔のしわ)、etc...
喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書
さらに日本で、受動喫煙が原因とされる疾患でなくなる人の数は
年間約15,000人とも言われ、
たばこを直接吸わなくても、上記のような疾病、症状にかかることがわかっています。
たばこ対策の健康影響および経済影響の包括的評価に関する研究
禁煙外来
日本では禁煙治療(ニコチン依存症治療)は保険診療にて行えます。
ほとんどの症例では禁煙補助薬を使用し、認知行動療法や助言などを併用して行っていきます。
やめてみようかと思ったときが好機!
ぜひ禁煙外来にいらしてください!
日本禁煙学会HP
もちろん薬局でもニコチンパッチなどを使用して禁煙することもできます。
ぜひ薬剤師にも相談していただけると的確なアドバイスしていただけると思いますよ。
雑感2018/9/5
入院患者に言われた一言。
「人として扱ってくれてないやろ。」
なかなかズシッと来る言葉でした。
少し時間を遡る
この日はシフトの関係上、いつもと違う病棟で業務をしていました。
入院の方が来て、初回面談をしました。
まあ入院契機はというと食欲不振です。
さらに脱水により、もともとの慢性腎不全が悪化しており、補液を行うような感じでした。
以前も入院歴があり、そのときもあまりご飯は食べれてませんでした。
施設職員も
「もともと食は細いかたなので。でも最近はさらに食べなくて、水分もとるように促してたんですが…。」と。
持参薬を主治医へ報告。
さらに患者へ補液していることと持参薬の説明(一部変更があったので)を説明しました。
このとき少しだけ時間もあったので30分ほど雑談しました。
私「今年は暑いですね。なかなか食欲も出ないですかね?」
患者「まあね。なんとなく食べたいと思わない。」
私「なにか食べたいものありますか?ここは病院なんで、お出しすることができないかもしれませんが。笑」
患者「んー。わからん。好きなもんならいくらでも食べれそうやけどなー。」
私「点滴だけじゃなかなか栄養は十分とれないし、なにか希望があれば言ってくださいね。」
患者「もう歳やからな。まあぼちぼちいくわ。」
私「まだいまは体のだるさで食欲は出ないかもしれませんね。なにか好きな食べ物とかありますか?」
患者「なんやろなー。」
私「今日は私が来ましたが、ここの病院の担当薬剤師は別の方がいるのでまたなにかあれば教えてくださいね。」
こんな感じで入院日のみ面談し、このときは笑顔で話してくれてて、なにか器質的な原因があるのか悪性疾患?認知機能低下?うつ状態?などなど考察してました。
それからしばらく会うことはなかったです。
そして9/5(入院2週間くらいかな?)
またシフトの関係でこの人のところへ訪室したところ
あの一言が。
入院してからほとんど食事は食べておらずNST(栄養サポートチーム)から栄養補助食品なども提供されてましたがぜんぜん食べれてませんでした。
担当薬剤師からは
「入院のときどんな感じだった?はじめのこと知ってるし、話してあげてほしい。」と。
私「お久しぶりです。私のこと覚えてますか?」
患者「知らん。(目を合わしてくれず、かなり痩せてきてる…)」
私「入院のとき少しお話ししたんですがまた少し話をしようと思ってきました。なかなかご飯は食べれてませんね。」
患者「そんなことよりな。それ以前の問題や。」
私「なにかありましたか?」
患者「無言」
私「みんないろいろ食事を工夫して提案してるみたいですけどあまり合わないみたいですね。口に合いませんか?笑」
患者「別に。(かなり不機嫌な顔)」
私「なるべく希望に沿ってやろうとは思いますが、なにか食べたいものとかはありますか?」
患者「言っても無駄や。」
私「たしかに病院なんで用意できないものもあるかもしれませんね。言っても無駄ってことはなにか食べたいものあるんですか?」
患者「昨日も言ったけどほったらかしや。」
私「そうだったんですか!?もしかしたら用意できなかったのかもしれませんね。ちなみに昨日は何が食べたかったんですか?」
患者「蕎麦や」
私「いいですね!蕎麦なら食べれそうですか?」
患者「いらん。」
私「なんでですか?」
患者「それ以前の問題や。」
私「沈黙」
患者「お前らはおれを人として扱ってくれてないやろ。」
私「…なにか至らないところがあったんですか?」
患者「しらん。」
これ以上話しても「無駄」「お前らは人じゃない」
などの繰り返しでした。
久しぶりに胸にグサッとくる言葉を聞いた気がします。
なにかあったんでしょう。悪意をもって接する人はいないと思ってます。
なにか考えの相違が大きな溝となっているのでしょうか。
認知機能低下はもしかしたらあるかもしれません。真偽はともかくこの言葉を出すってことは相当だと思いました。
少し毎日顔を見に伺おうと思います。
読みづらくてすみません。
ブログもっと見やすくできひんかな?
P.S.
9/22発売の少年ジャンプからHUNTER×HUNTERの連載が再開します!
今回は早めの再開!約5ヵ月だって!
冨樫先生ありがとう!
欅坂46ありがとう!
スルピリドについて
学生の頃は適応症の違いによって用法用量が変わる薬剤の代表格として習った。
添付文書上では
○胃・十二指腸潰瘍
通常成人1日150mgを3回に分割経口投与する。
通常成人1日300mg~600mgを分割経口投与する。
通常成人1日150mg~300mgを分割経口投与する。
学生の頃は
「なんかいろんなやつに効くんやなー。」
とか呆然と考えてたけど。
実際働いてる中でパーキンソニズムの被疑薬として見ることが多い!
正直なところ個人的な実感として食欲不振に対して処方されてるときも効果を実感したことはない!!
てかことで一度さらっと調べてみました。
薬理作用など
CTZを介しての中枢性嘔吐に対する制吐作用
(クロルプロマジンの14.3 倍)
引用元:ドグマチール®インタビューフォーム
この制吐作用についてはあまり知られてないのでは?
疾患による嘔吐を不顕性化する可能性がある。
副作用
この錐体外路症状が高齢者ではほんとに多い。
代表格が遅発性ジスキネジア
高齢者の方のお口もぐもぐはこれです。
こういう高齢の知り合いがいれば薬を確認してみてください。
薬剤師としては以下の評価スケールを利用し、
日々の患者ケアに役立ててほしいところですね。
DIEPSS
抗精神病薬で発症する錐体外路症状を評価するために標準化されたスケール
歩行,動作緩慢,流涎,筋強剛,振戦,アカシジア,ジストニア,ジスキネシア,概括重症度の9項目,および各症状の重症度を4段階に分類しています。
副作用実例
圧迫骨折にて入院。高齢者女性。
入院時リハビリ中に歩行障害(すくみ足)がみられ、下肢振戦著名。
その他の症状として無表情、アパシー。
軽度改善見られた。
担当外薬剤師がスルピリド内服していること発見。神経内科医へ報告し、スルピリド中止。L-dopaも一旦中止し、経過観察。
さらに症状改善見られ、退院。
その後の施設にて自発性改善が徐々にみられている。
可逆的に戻ってよかった症例。
スルピリドの処方意図は不明。(たぶん食欲不振?)
何十年と内服していた様子。
じゃあ実際の治療の効果はどうなんだ?
正直微妙ではないでしょうか。
統合失調症に対するCochran Reviewでは
プラセボに対する優位性の証拠は非常に限られているとされ、かなり情報は少ない。
https://doi.org/10.1002/14651858.CD007811.pub2
https://doi.org/10.1002/14651858.CD001162
うつ病に対しては「日本うつ病学会治療ガイドライン」ではスルピリドでの治療は副作用の問題から推奨はされていない。
胃・十二指腸潰瘍についてはいわなくてもいいですよね?
PPI、H2RAには到底及びません。
食欲増進効果は?
理論的には消化管のドパミンD2受容体を遮断し、アセチルコリンの分泌を促進。
そのアセチルコリンによる消化管運動亢進。
以下のメタ解析では有効性は実証できていない。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22795216
つまり医師の経験的に処方されている薬剤といえる。
結論
おれが医者なら絶対に使わん薬だろうな。
高齢者で飲んでる人いたら1回やめてみるように提案する。
「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015;慎重な投与を要する薬物」
スルピリド:エビデンスの質は「低」ですが、推奨度は「強」です。